2004年11月07日

理論派ブス

「少数意見を尊重して下さ〜い」

 ホームルームの時間、クラス内だけに止まらず、学年の中でもピカイチの理論派ブスと評判のナカヤマさんがこう言いだした。…まあ、いつもの事なので別段驚く事もなかったのだが、コレが始まるとホームルームはホント、死ぬほど長引くのだ…。クラスメートたちの表情が暗くなる。

 今日のホームルームの議題は、10月に行われる文化祭でのクラスの出し物を何にするか。ウチの中学の文化祭は、外部からお客さんが来るわけでもなく、模擬店も認められておらず、ただただ各クラスが何かの研究をしてそれを教室で発表して学校内の人たちが見て廻るだけ…という非常にヌル〜イものだったので、ほとんどの生徒は文化祭に対してやる気なんか皆無なのだ。だから正直な所、研究テーマなんて別になーんでもよかった。


 …ということで、ボクが面白半分で出した「キン肉マンの必殺技大研究」という、今思えば中学二年生がやる研究としては心底どうかと思うぶざけまくったテーマが、クラスの男子の大半を占める「文化祭なんてやる気がしねーよ」層の心をガッチリ鷲掴みにした。…もちろん女子がこんなもんに乗ってくるハズはないのだが、最終的な多数決の結果、バカ丸出しの童貞カピカピ男子たちによる組織票で、クラスの頭いいグループが推していた二位の「ホーキングと宇宙」を大幅に抑えて、「キン肉マン」に決定。…しようとしていた時に飛び出したのが先の発言「少数意見を尊重して下さ〜い」なのだ。

 さて、彼女が推している「少数意見」というのが一体何だったのかっちゅうと、当然「キン肉マンの必殺技研究」のハズはなく、かといって二番人気の「ホーキングと宇宙」でもない、彼女自身による提案の「リサイクルを考える・手漉き再生紙を作ってみよう」という、いかにも偽善ブスが考えつきそうなクソつまらなそうな企画。イヤ、環境の事考えたらいい事なのかもしんないけどね…。授業でもないのに、そんなことやりたがる中学生なんてそうそういるわけもなく、得票数はわずか二票…。「投票数一位と二位の、キン肉マンとホーキングで決選投票をしよう!」…という主張ならまだわかるけど、二票しか入っていない手漉き再生紙まで尊重してたら…多数決の意味全然ねぇ〜じゃん!

 しかし、彼女の中では「リサイクル→良いこと」「リサイクルを研究しようとしているワタシ→良い人」「それに反対している愚民ども→悪人」「悪人→死ねばいいのに」という図式が完成してしまっているので、周りがどんなに文句を言おうとも、全く気にも止めず熱弁を振るう。

「…皆さんは、年間にどれだけ多くの木材が伐採されているか知らないんですか!? このままでは世界中の森が消えてしまうかもしれないんです。…再生紙の重要さを考えて下さい!」

 …イヤ、確かにリサイクルが必要なのはわかる…それは正論だよ…でも…別にそれが文化祭の発表を決める多数決の結果を覆す理由にはならないんじゃないの!? …クラス中にそんな空気が流れまくっているものの、「地球の運命」という、とてつもなくドデカい物を自主的に背負ってしまった彼女のテンションはエスカレートする一方だ。

「だいたい、キン肉マンだなんて…男子はふざけ過ぎだと思います! …皆さんが吸っている酸素は、植物たちが作ってくれているのです。その大切さがわからない人は息をする権利はないと思います!」

 …息をする権利がないって…そこまで言うか…。男子の間に、明らかに苛ついた空気が流れる。そして、バカな男子の中でも一際バカ丸出しなタイプのオカダくんが、突然反撃の口火を切った。

「そんな事言ったら、キン肉マンだって悪魔超人や完璧超人と戦って地球を守ってるんだぜ! キン肉マンに感謝しろよなー!」

 …イヤ、いくらなんでもあんまりに頭の悪過ぎる発言だって事はわかってる…。でも、こんな理論派ブスをつけ上がらせるくらいだったら、どんなにバカな発言にでも乗っかっちゃうよ!

「そうだそうだー! お前なんかジャンクマンにジャンククラッシュされて、ペラッペラになっちまえー!」

「ネプチューンキングの素顔みたいな顔してるくせにさー」「ブース! ブース! ブース! ブース!」

 あー、理論派ブスと対立すると、当時の男子の悲しいまでの頭の悪さが際だつなー…。結局ナカヤマさんは、いくら理屈をこねても全く意味がないバカ丸出しの男子たちの攻撃に耐えかねて泣き出してしまった。

「再生紙を…作らないと…木がなくなっちゃって…酸素がなくなっちゃうから…生き物は…エグエグ…生きて…いけないんですーッ!」

 理論派ブスの最終兵器は、理論でもなんでもなく、ただの女の涙なのだ。こうなると、ナカヤマさんのあまりにアツアツな演説にひいていた女子たちも、女を泣かせた悪な男子たちに敵意剥き出しでかかってくる。…あー、もー、ホント厄介…。

 結局、男子VS女子全面戦争が勃発する直前に、見るに見かねた先生が、男子と女子、それぞれの言い分の間を取った企画を提案して、文化祭ではその発表をやることになった。その企画というのが…皆で作った手漉き再生紙にキン肉マンの数々の名シーンを描いてそれを展示するというもの。うーん…それって間とれてるのかなぁ〜…。そしてナカヤマさん的には、あれで満足してたんだろうか…。


<「RoofTop」十月号掲載「北村ヂンのセンチメンタル★高校13年生」より>
posted by 北村ヂン at 09:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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