小学校2、3年の頃の話ですかね。その頃僕の住んでいた地域には、あまり空き地や公園みたいなものがなく、子供たちの遊ぶ場所と言えば専ら河原だったんですよ。ただ、その辺りは盆地っぽい地形だったためにちょっと雨が降るとすぐに川が氾濫してしまうことや、「河原には家ナシおじさんが住んでいる」という噂がまことしやかに流れていたことなどから、学校や親からは「あまり河原では遊ばないように」と言われていました。でも、ダメと言われればかえってやりたくなってしまうお年頃。他に遊ぶ場所もなかったので、僕たちはぜ〜んぜん気にしないで、毎日学校が終わると河原へ向かい野球やらサッカーやらをして遊んでいたもんです。

 そんなある日のことです。その日も例の如く友達数人で集まってサッカーをしていたのですが、シュートが外れて、あらぬ方向へ飛んでいったサッカーボールを追いかけて河原のヤブの中に入っていくと、そこには乗り捨てられて鉄屑となった自動車が……。ボールはその車のタイヤの付近に転がっていたんですが、何の気なしに窓の中ををのぞいてみると、そこには……おっぱいをボローンを放りだし、こちらに笑顔を振りまいているたくさんの女の人がいました。

「おっぱいが、いっぱ〜〜い。おっぱいが、いっぱ〜〜〜〜〜〜い……」

 例の歌のメロディーが僕の頭の中に流れ出しました。もちろん本当に女の人がいた訳ではなく、車の中に大量のエロティック本が散乱していたということなのですが、当時まだエロ本を見た事もない、もちろんお母さん以外のおっぱいなど見た事のなかった僕にとってそれは、エロとのファースト・コンタクト。今思えばその中には、かなり行き過ぎたタイプのエッチ本も含まれていた様な気もします。いきなりエロメーターを振り切ってしまった僕は、なんか……頭がシビれちゃいましてねぇ……。とりあえず適当に数冊をわしづかみにし、そのまま家に帰ってしまいました。


 次の日学校に行くと、昨日突然失踪した僕を不信に思った友人から色々聞かれましたが、「急にお腹が痛くなっちゃって」的な事を言ってお茶を濁したと記憶しています。友人たちも「あ、そう」みたいな感じで特ににそれ以上つっこまれることはありませんでした。それからも今まで通り毎日、仲良く河原で遊びました。……ただ、僕だけ週に一度くらいの割合で帰る時間に「ちょっと今日は寄るところがあるから」みたいな事を言って友人と別れ、エッチ・ブックを回収するというシークレットな任務が増えていたのですが……。

 不思議な事にその自動車から、何度エロ本を持って帰っても、しばらくたつとまた増えているのです。まさにエロの沸き出すエロの泉、エロス打ち出の小槌です。素晴らしい宝島を手に入れた僕は、無尽蔵に沸き出す泉から次々にエロ本を回収しては、もう読んでしまった古い本を川に流し、回収しては、流し……という、男子誰もがエロ飢饉に悩まされる小学生期としては、僕はかなり恵まれた生活を送っていたと言えるんじゃないでしょうか。
 しかしそんな幸福の日々も長くは続きませんでした。ある日のこと、その頃になるともう相当大胆になっていた僕は、あらかじめ家から持ってきておいたボストンバックの中に次々とエロ本を放り込んでいました。……すると背後でなんか物音が……。

「な、な、な、な〜ぁ〜にしてんだよォ」

 そこには鉄パイプみたいなものを持った、ジプシー風おじさんが立っていました。

「うわぁぁああああ!」

 瞬時に全てのことを察知した僕は、(というか最初からこの自動車が家ナシおじさんの家なんじゃないかな〜〜〜? ということには薄々気付いてはいたんですが……)手に持っていたエチ本をすべておじさんに投げつけ走り出しました。

「まてぇぇぇぇえええええ!!!!」

 いきなりの飛び道具攻撃に一瞬ひるんだおじさんでしたが、そこは大人。鉄パイプっぽい何かを振り上げ鬼の形相で追っかけてきます。僕は川沿いに配置してあるテトラポットによじ登り、テトラポットの上を渡りながら必死で逃げていきました。

<BGM:THE BLUE HEARTS「テトラポットの上」>

 しかし悲しいかな大人と子供の明らかな力の差によってどんどん距離は縮まって行き、もはやおじさんの吐息が聞こえるくらいまで近づいてきています。

「ヤバイ! 捕まるッ!」

 そう思った瞬間「あ」という声と「ぶふっ」という鈍い音がして、おじさんの吐息が聞こえなくなりました。ちょっと離れてから恐る恐る後ろを振り返ってみると……おじさんは消えていました。……………………なんかうめき声が聞こえます…………。若干、マズイ事になってんじゃねぇかな〜とは思ったんですが、「日本には古来より、神隠しっていう現象があるっていうしな」と必死で自分をごまかして、怖いんでそのまま帰っちゃいました。

 こうしてなんとか無事に逃げ延びた僕でしたが、この経験のせいで「エロ本を見るのもイヤ」という時期がしばらく続いたもんです。

 

 


 その年の夏。結構大きめの台風が上陸し、僕の宝島、つまり家ナシおじさんの「家」は河原から消えて無くなりました……。僕も今ではエロ本もAVも見まくり放題、という程までに回復を果たしています。家ナシおじさん……元気にしてるんですかねぇ。