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僕らが小学校だった頃、学校でウンコするということは、この世で一番恥ずかしい事でした。まあ女子はね、ウンコ室と小便器が別れてないからあんまり問題はないんでしょうが、男子便所のウンコ室は、小便器とは別に独立して存在していたため、決して立ち入ってはいけない場所。そう、まさに聖地(サンクチュアリ)だったのです。
とはいえ「出物腫れ物ところ嫌わず」というように、いかに学校とはいえウンコをしたくなることもあるもんです、だけど見つかったら恥ずかしい……、でもウンコしたい……、そんな鬱屈した思いが積もり積もって「俺がウンコガマンしてるんだから、他のヤツにもウンコさせたくない!」という非常に間違った結論に到達。その結果、クラスの中でも飛びきりIQの低い馬鹿男子よって「ウンコGメン」と呼ばれる、校内ウンコ取り締まり集団が結成されるに至ったのです。
このウンコGメンの構成員が、もしウンコ室の扉が閉じてるのを発見しようものなら、自分の尿意も忘れて教室に駆け戻り「お〜い誰かがウンコしてんぞ〜!」とアナウンス。それがウンコGメンの出動合図となるのです。直ちに現場に急行するウンコGメン。とりあえず手始めにウンコ室の前に陣取って「ウンコしてる、ウンコしてる、ウンコしてる」とシュプレヒコールの嵐。それからはもう、限度をしらない地獄のウンコ祭のはじまり。扉の下のスキマからモップでつつく、ドアをノックしまくる、ホースで水をまくという、今考えるとウンコしただけでなんでこんな事されなきゃいけないのだっていう程の仕打ちの数々が繰り広げることとなるのです。
まあ、かくいう私も当時はウンコGメンの一員であり、日々校内ウンコの現行犯逮捕のためにがんばっていたもんでした。
そんなある日のお昼休み。ウンコGメンの一員である悪友Tが例のごとく「ウンコしてるやつがいるぞ〜!」と教室に駆け込んできました、当然ウンコGメン緊急出動です。お約束通り「ウ〜ン〜コ、ウ〜ン〜コ」という大合唱を始めました。大概のウンコ犯人はこの段階でひるんで、ウンコが止まってしまうもんなんですが、この日の犯人はかなりの肝っ玉の持ち主らしく、それでもバビッ、ブバッと余裕で糞をひり続けています。こちとら地獄の便所番と恐れられたウンコGメン、これだけで終わるはずもなく、続けざまに第二段階のモップ攻撃を開始、それでも降参しない強力な犯人に、めったに使用される事のない最終兵器ホースによる放水を開始。普通ここまでやれば「やめてくれよ〜」の声くらい上がるもんなのに、それすらありません。
「今日の犯人は相当の大物だ……、大ボスに違いない……」
しかしここで引き下がってはウンコGメンの名がすたります。
「とりあえず、どんなやつがしてんのか見てやろうぜ」
という事になり。ウンコGメンを代表し、僕と悪友Tが扉をよじ登りました。そして中をのぞき込むとそこには……びしょ濡れになりながら半糞をたれ、鬼のような形相でこちらを睨んでいる担任の松村先生がいたのです。
「ま、松村先生…」
真っ青になる私とT。
「お〜れし〜らね〜」
と言い逃げ出す他のウンコGメン・メンバー達。後で覚えとけよ、という顔でこちらを睨んでいる松村先生。こっちがウンコもらしそうになる程のパニック状態に陥った私とTは「松村先生が出てきたら、すごい怒られる、ヤバイ」ということで、必死でモップの柄でウンコ室の扉につっかえ棒をし、松村先生が出て来れないようにしてから、遠くへ、とおぉぉぉ〜〜〜くへ逃げました。
そこから先の記憶は朧気なのですが……、確か学校からも逃げ出し町のデパートの屋上でただただ雲を眺めていたような気がします。屋上のゲームコーナーにあった車から流れてくる「と〜りゃんせ〜と〜りゃんせ〜」のメロディーが、今でも耳の奥に響いています……。
さて、松村先生はというと、お昼休みが終わっても授業に出てこないと不信に思ったクラスの生徒によって無事発見されたとかされないとか、僕らが次の日思いっきりグーで殴られたのは言うまでもありませんな。
……ということでこんな悲劇を生み出してしまう、大小分離型便所は直ちに廃止して、完全個室型男子便所を導入すべきだと、声を大にして文部省に提言する次第であります。以上、青年の主張でした。
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