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台風来てますね。なんかね、突然思い出しちゃいました、イヤーな事を…。
小学校二、三年の頃ですかね、僕らの周りで秘密基地建設ブームというものが到来してまして、皆こぞって空き地や公園に秘密基地を作っていたのです。しかしその辺はまあ子供、基地と行ってもデカめの段ボールを積み重ねた程度の、まあいわゆる段ボールハウス程度のもんだったんですが。その頃から世の中を冷めた目で見るタイプの、かわいくない子供だった僕は「段ボールで出来た基地なんてダメだよ、そんなんじゃ敵の攻撃から身を守れない!」と思い「もっとスゴイ基地を作らねば!」という意味不明の使命感に燃えていました。
そこでどんなのがスゴイ基地なのか、というのを考えた結果、やっぱり超高層ビルか地下室だろう、という子供らしくわかりやす〜い結論に落ち着き。とはいえ超高層建築はどう考えても不可能なので、地下室を作ることに決めました。当時、非常に仲の良かったTくんと二人、皆を驚かそうと秘密裏にその素晴らしい基地の建設計画を開始。それから、夏休みの大半を近所の河原で延々穴を掘る、という非常にストイック、というか土方ライクな作業に費やし。夏休みも終わりに近づく頃には、かなりの規模の穴が掘り上がって、仕上げとして工事現場に落ちていたブロックや建材を集めてきて、それらしい感じにドレスアップ。かくして、子供作ったにしてはまあ結構な出来映えの秘密基地が完成したわけです。
他の段ボール製秘密基地とは一線を画すその完成度に、友達からは「すげ〜すげ〜」と賞賛の嵐。それに気を良くした僕とTくんはこれ以降、毎日毎日その自慢の基地に通い、何をするでもなく穴の底でじ〜っとして、蟻が入ってきたら足をもぎ、花を摘んでは蜜を吸うという、今考えるとかなり深刻な問題を抱え込んでるんじゃないの? って感じの日々を送っていました。
しかしそんな平穏な日々も長くは続きません。
来ました、台風が!
その年は関東直撃かなんかで、例年になくかなりビッグなタイフーンで、学校も休校となり、当然子供が外を出歩くなんてとんでもないという状況だったのですが、僕とTくんは「台風なんて大丈夫! だって基地だから」というムチャクチャな理論を盾に、吹き荒れる嵐の中、基地に向かい、穴の底で二人じ〜っとしていたのです。なぜそんなことをしなければならなかったのか、今となっては本当に理解に苦しむところなんですが。おそらく台風を敵の攻撃と見なし「僕らの基地を守らなければ」という気持ちが働いたのと、「なんかもうメチャクチャでた〜のしい」という子供独特のバカ脳内麻薬が出まくりなのとが相まって、妙にハイテンションになっていたのは覚えています。
当時私が住んでた地域は下水道の整備が遅れていて、ちょっと雨が降るとすぐに道が水浸しになってしまうような場所だったのですが。当然それだけの台風が来たらタダで済むはずがありません。
川が、川が…ものすごいことになってしまいました。
「あ」と思うまもなく怒濤のイキオイで基地には泥水が流れ込み。僕らの自慢の基地は一瞬にして崩壊。僕は突然の出来事にパニック状態になりながらも必死に近くにあった木材にしがみつきました。間もなく川のイキオイもやや収まり、僕は事なきを得ました。
が、
Tくんは…Tくんは…。
その後の記憶は、僕の心のず〜っと奥の方にしまい込んでしまったのでよく思い出せません。ただ、泥水に巻き込まれながら、ちぃぃぃ〜さくちぃぃ〜さくなっていくTくんと、怖くなって泣きながら家に逃げ帰る僕、親に連れられ泣きながらTくんの家に謝りに行っている僕…という様々な映像たちが断片的に脳裏に浮かんでは消えていきます。
風の噂ではTくんも既に結婚し、子供も生まれたとか生まれてないとか。あそこで死んでなくてほんっっっっっっっとうに良かったですね〜〜〜。 |